第18章 好きな子程いじめたくなる?【刀剣 薬研藤四郎】
「褒美は決めだぜ、大将。弟達にするみたいに、俺っちにも膝枕してくれよ」
言葉に驚いて振り返れば、
「俺っちだって、アイツ等と同じ短刀だぜ」
と、いつもと同じセリフでとてもいい顔をして笑う。
不覚にも、『格好いいな』なんて思ってしまう自分も居るが…
それにしても、膝枕って…。
また、からかわれているのは分かっているが、
『褒美』と言われると無下に断る事もできず、
だからと言って、薬研を相手に『さぁ、どうぞ』とも言えそうになくて…
どうしたらいいか分からず、あたふたしている私に、
褒美をねだった本人はクスクスと肩を震わせて笑いながら、隣に並んだ。
また、綺麗な顔が少しだけ私を見上げる。
「大将は面白いなぁ」
「からかわないで下さい。私は全然、楽しくないです‼」
「見てると飽きないな」
「もういいです。明日、薬研さん一人で馬当番をしてもらう事にします」
「別に構わないぜ」
私達のやり取りに、
再び、青江はやれやれとあからさまな溜め息を溢して、
「君たち、一層の事くっついてしまったらどうだい?」
と、信じられない言葉を残してその場を去って行った。
「そうだな。そうするか。なぁ?たーいしょ」
青江の言葉に、薬研はそう返して私の腰を抱く。
待って…青江。お願い、助けて。
残された私は、
この状況を対処する術など、
勿論、持ち合わせていなくて、
遠ざかる青江の背中と、
少しだけ下にある薬研の綺麗な顔を
ただ、ただ、交互に見つめていた。