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いとし、いとし【短編集】

第2章 名前を呼んで【krk 黒子テツヤ】


特に何かを話す訳でもなく、
もちろん、手を繋ぐわけでもなく、
少しの間を開けて、私達は並んで歩く。


私と黒子くんは、いつもこんな感じだ。

『それって、付き合ってるって言うのかよ‼』と、彼の相棒、火神くんが言っていたけど、

私は、このままで構わない。


彼の隣は、
とても心地よくて、
とても穏やかな気持ちになれる。


並んで歩くだけで、
いつもと同じ通学路の景色が、
キラキラと輝いて見える。


そんな風に特別を感じながら、さらさらと揺れる水色の髪を横目で見ていると、


「危ないですよ」

と、腕を引かれた。


思った以上の力に、
足がよろめくけれど、
しっかりと彼の胸に抱き止められる。


意とせず身体を預けた先は、

【儚くて綺麗だ】と思っていた彼とは全然違っていて、

しっかりと男性を感じた。


黒子くんの腕の中で、戸惑う私の横を、小学生の自転車が通りすぎる。


私の頬は、身体は、急速に熱を持つ。
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