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いとし、いとし【短編集】

第2章 名前を呼んで【krk 黒子テツヤ】


「あ、あの…。ごめんなさい」

支えてくれていた彼の腕を抜け出し、謝罪を口にすれば、


「結依は危なっかしいですね」


と、黒子くんが笑った。



ん?あれ?

今…名前…。


私の気持ちは顔に出ていたんだろう…。


「できれば、僕も名前で呼んで欲しいです」

少しだけ頬を赤らめながら、
そう、彼は言う。

「なんか、試合よりも緊張しますね…」

なんて、顔を少し伏せながら…。


なんかもう…

恥ずかしくて、ドキドキし過ぎて、頭が真っ白だ。





「よければ、手を繋いで帰りませんか?」


差し出された右手に、

私も、少しの勇気を出して、

左手を伸ばした。



「うん。帰ろう。…テツヤくん」



何度も青空に向けて呼んだ彼の名前を、口にする。



さっきは少し間が開いていた二人の影は、

今は、右手と左手が繋がれて、


私達の前に伸びていた。

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