第16章 親愛の情だったはず…【刀剣 御手杵】
今日も今日とて、
御手杵は短刀達や脇差達と中庭でわちゃわちゃしている。
うちの本丸には、まだ、一期一振が居ない。
だから、彼がこうやって相手をしてくれるのは助かる。
助かるんだけど…。
「あのー。御手杵さーん。貴方、今日の近侍なんですけど…。お仕事お願いしたいんだけど…」
執務室の窓障子から中庭に向かって声をかければ、
「主さーん」
「主ー」
「主君ー」
と満面の笑みを向けて短刀ちゃん達が寄って来てくれた。
「見て下さい。お花です」
と、手折った花を差し出す五虎退に、
こちらまでほんわかと癒される。
やばい。可愛い…。
って、違う‼
本来の目的を忘れる所だった。
「皆、遊んでるとこゴメンね。御手杵、万屋行くから着いてきて」
「うぇー。長谷部と行けよー。なんだ?買い物に連れていって、見せびらかそうって?」
「あのね…。長谷部は遠征。今日の近侍は貴方。ほら、行くよ」
私の申し出に、不満をもらす御手杵を軽くあしらって、
「おみやげお願いね」
なんて、可愛くおねだりしてくる乱に苦笑いを返して、私達は万屋へ向った。