第16章 親愛の情だったはず…【刀剣 御手杵】
うちの一番槍は御手杵だ。
1ヶ月程前、出陣した第一部隊が、連れて帰って来てくれた。
『刺すことしか能がない』とかいいながらも、大体の事はそつなくこなす彼。
その彼は今や、我が本丸の戦力として充分に力を発揮してくれている。
だが…
如何せん普段の行動が緩い。
短刀達を肩車しながら中庭でわちゃわちゃと遊んでいる姿は、面倒見の良いお兄さんと言うよりは同レベルな大きい子どもに見えるし、
内番を頼めば、露骨に嫌そうな顔をして、挙げ句、仕事を放り出して、脇差達とおしゃべりして、長谷部に怒られている。
『なぁ。俺は槍だぞ。戦に行かせてくれよー』と執務室ですり寄る姿は、
端からみたら甘える大型犬だし、
ご要望に答えて、取り合えず演練に行かせれば『訓練か…』とボヤく。
その癖、大好きな戦で自分が誉を取ると、『俺が一番でいいのか?』なんて、戸惑ったりする。
「御手杵さん、戦ではとっても格好いいんですよー‼」
「そうですね。ふだんとちがって、かおがきりっとしますね」
なんて、可愛い可愛い秋田と今剣がおめめをキラキラさせながら教えてくれたけど、
残念ながら審神者の私はその姿を見ることは殆ど無いのだ。