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いとし、いとし【短編集】

第14章 笑顔は幸せを呼ぶ【krk 実渕玲央】


《クラス会のお知らせ》

家に来ていた1枚の葉書を見つめて溜め息を溢す。

例の男子が幹事らしく、お知らせには彼の名前と共に『ちゃんと来いよ。全員集合な‼』と一言添えてあった。



どの口が言うのだ…と、一言もの申したい。

だいたい、中学のクラスに思い入れなんて無いのに…。


「はぁー」

2度目の溜め息が口から溢れると、


「もう。幸せが逃げるわよ。笑顔よ。笑顔」

と、前の席に座った玲央が私の頬をつまんだ。


私は彼のおかげで変われたんだ。

2年に進級してすぐ、

誰とも話さず、自席でポツンと本を読んでいた私に、

『おはよう』
『何読んでるの?』
『お昼、一緒に食べない?』

と、玲央は根気よく声を掛けてくれて、



『下ばっかり向いてちゃダメよ』
『女の子は笑ってなくちゃ』
『結依って、ほっとけないのよ』

と、何かと構ってくれ、

玲央になされるがまま前髪を切ったり…
ずっと下を向いていると、ぐいっと顔をあげられたり…

そんな有無を言わさぬ、ぐいぐいくる玲央に、ちょっとずつ心を開き初めて自分の事を話すようになったり…


そうやって、彼と関わる事で気づけばクラスの輪の中に自然と入って行く事が出来た。



私の意見なんか無視で『短いぐらいが可愛いわよ』と彼によって眉の上で切られた前髪は未だに慣れないけど、

玲央には感謝している。

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