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いとし、いとし【短編集】

第14章 笑顔は幸せを呼ぶ【krk 実渕玲央】


『余所もん、キモいわぁ!顔見せんなや‼』


親の転勤で京都に越してきた小学生の時、クラスメートになったばかりの男子に言われたこの言葉は、まだ幼かった私の心を抉るには充分過ぎるくらい充分だった。

言葉のイントネーションが違う。
文化も違う。

そんな中で、
不安いっぱいの中で、
浴びせられたその言葉…。



それから…私は、

前髪を伸ばし、下を向いて過ごすようになった。

明るい方だった性格は、伸びた前髪に比例していくようにどんどんと後ろ向きになっていく。

友だちもできない…。


残念な事に、
例の男子とはそれからずっと同じクラスで…
中学三年間も同じクラスで…


私はずっと下を向いて過ごす。

当の本人は、私に浴びせた言葉なんて忘れて、気軽に話しかけてきたりする。

それが、たまらなく嫌だった。

また、同じような事を言われるのではないかと怖かった。



誰にも話しかけられないように、
誰とも話さなくて済むように、

教室の隅でポツリと一人、本を読んで過ごす事が当たり前になった。



それは、高校に上がって、例の男子とは離れても変わらなかった。

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