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いとし、いとし【短編集】

第10章 雄弁な瞳【krk 水戸部凛之助】


「どうしたの?」とでも言いたげに、首を傾げる水戸部くん。


「何でもないよ。大丈夫」


私の言葉に、彼は少し不満そうな顔をした気がしたけど、見て見ぬふりをした。


だって…

『私の事好き?』なんて聞いてみても、結局…頷かれるだけなのだから。

私の言葉に、彼が頷いたり、首を振ったり…。

yesかnoかの会話。

彼からの言葉は無い…。


水戸部くんが喋らないと解っていて、
それでもいいと思って自分から告白したくせに、
無理に喋らすつもりなんて無いって思っていたくせに、

結局…
私は、水戸部くんの言葉が欲しいんだ。

私が好きだと、水戸部くんに言って欲しいんだ。


(ワガママだな…私…)
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