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いとし、いとし【短編集】

第1章 不安と心配と【krk 木吉鉄平】


練習後。

「着替えてくるから、待っててくれ」


鉄平にそう言われて、校門で彼を待っていた。

部室の側に行くのは、なんとなく気が引けた。


だって…
皆は真剣で、
目標に向かって全力で、
一致団結していて。


そんな所に『やめて欲しい』なんて頭の端で思っている様な私が居てはいけないと思ったから。




「行かなきゃよかったな…」


呟いて、自分の影に視線を落とす。

夕陽で茜色に染まった綺麗な地面に映る黒い影は、自分の嫌な気持ちを、黒い気持ちを、現しているようだった。



「私が側に居ても邪魔になるだけかな…」


鉄平を応援したい気持ちはもちろんある。

それでも…。


そう思った時、

ふと、自分より長い影が自分の影に重なって、頭に手の平が乗った。

見上げれば、困ったように眉を下げる鉄平がいる。




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