第23章 はじまりは苦味【hq 烏養繋心】
確かにあれから年月は経っていて、1度クラスメートになったくらいでは『覚えていない』と言われてもなんら不思議ではない。
でも、烏養くんとは3年間同じクラスだった。
あまり勉強ができるタイプではない彼に、
めいっぱいの好意を詰め込んで、テストの度にノートを貸していたのに、覚えてないとはあんまりだと思う…。
「早瀬 結依です。ここで3年間同じクラスだったんだけど覚えてない?」
あくまでも、やんわりと問いただせば、
彼は自分の首の後ろに手をやって、
それから、
「あっ‼」
と叫んだ。
その声に部員の動きが止まる。
「ノート貸してくれてた…ってか変わったなぁ、眼鏡はどうした。眼鏡は。あれないとわかんねぇぞ!」
「あっ、眼鏡ね…。眼鏡は卒業しました」
「そっか、そっか、久し振りだなぁ。ここで先生してんのか?流石だなぁ」
「烏養くんは、なんともらしい身形だね…。コーチしてるの?バレー部だったもんね」
お互いに認識しあえば、出てくるのは『久し振り』という言葉と懐かしさ。
積もりに積もった話に花が咲きそうになるけども…
「あのー。コーチ?」
という部員の声に遮られた。