第14章 ウィル・オブ・タイクーン
治はその答えに、声を上げて笑う。彼自身はどんな気分なのか知りもしないが、自分的には案の定の答えが返って来た事に思わず鼻で笑う。
「いやぁ、実におめでたいお誘いだ」
「貴方方の記録を見ました。貴方の血は、マフィアの黒です。この国の誰よりも」
「人は変わるものだ。現に其処の銀ちゃんだって、昔はこーんなに小さくて可憐な少女だったのだよ(笑」
「…話をすり替えないで下さい」
「……え、お?」
急に話を振られ赤面する銀。…てか樋口さん、自分の部下なのに性別知らなかったんだ。酷い上司もいたものだ。
『話を戻すけど、腑に落ちない事がある。彼の人がこんな茶番に人員を割くなんて』
「貴方方を守る為です」
私達を守る?何の為かと問うと、次は予想外の返答に私も治も、顔が歪む。
「首領はQを座敷牢から解き放ちました」
「馬鹿な、Qは敵も味方も全て滅ぼす、歩く厄災だ。何故Qが座敷牢に封印されたと思う。異能力の中でも最も忌み嫌われる精神操作の異能力者だからだ」
「闘争を制する為なら手段は選びません」
『ちょっと待って、ここに来た時言ってたよね?私達を守る為だって…』
「⁈しまったッ」『治、急いで戻ってッ!』
Qの異能は彼でなければ止める事が出来ない。その為、彼を先に戻らせた。私は樋口にもう一つ聞きたい事があったからだ。
「貴女は戻らなくて宜しいのですか?」
『さっきの伝言は治だけにしか言っていない。私にも何か伝言を言付かっているんじゃない?』
私が聞けば樋口は「そうです」と答える。
「然し、この伝言は彼にも関係があります」『治にも?』
「【幹部に戻る話は強制ではない。但し、断るのであれば娘だけは返してもらうよ】との事です」
『…四十にもなって子離れ出来てないとか、情けない限りだね』
「実際の所、如何なのですか?」
質問の意図が分からず質問を返す。ただ太宰に拐かされたのか、私の意思で太宰に付いて行ったのか、と云う質問のようだ。
「組織内でも噂されています。貴女は家族想いで、首領を裏切る筈が無い、と」
『買い被りすぎだよ、皆私にどんな印象持っているのやら』
とだけ答えるその場を去ろうとする。
『さっきの質問の答えだけど、前者でもあり後者でもある、かな』
「一体何故?」
『簡単な事だよ。
心底惚れた男について来て欲しい、って云われたら、行くしかないじゃない』