第1章 出会い×別れ
セレナ
「な…なん…で…」
肩で息をしながら、ネテロ会長を見る。彼の左手にはちゃんとボールが収まっていた。
ネテロ会長
「お主、外から来たな?」
セレナ
「……術に、失敗してこっちに、きてしまったんです。所謂異世界へこんにちわーってやつ、ですね。はぁ……つか、れた」
左上腕の痛みはなくなっていた。と、同時にまるでムダだった魔力の消費をしてしまったことにすごく後悔していた。甘かった。魔力を使えばどうにかなると思っていた。
手に持っている愛刀を見る。ダガーのようなもので、装飾はシンプル。柄の先に青い宝石が1つはめ込まれており、その宝石にはアーヴァンシュ家の紋様が金色で刻み込まれていた。父が最期に託してくれたモノだった。
ネテロ会長
「お前さんのことをもっと聞きたいがの、とりあえず休んだほうがいい」
コクリ、と素直に頷いた。
だんだんと重たくなっていくまぶた。
意識がぼんやりとしていく中で、わたしは、マクラを持ってくるのを忘れてしまったことに気がついた。
セレナ
「空間移動とか…飛行とか……しってれば…とりに、いけたのに」
ネテロ会長
「いずれ、マクラなしでも寝られるようになるじゃろ」
思えば、空間移動や飛行といった魔法は第三次魔界戦争の時に禁術として取り扱われ、特別な資格を持つもの以外使用することを禁じられた。それは、王族の者でも適応される。
寝転がった床は固く、きっと起きた時は頭とか体節々が痛くなっているんだろう。わたしにはやはりまだ、マクラなしでは寝られそうにない。誰かの支えなしでは、安心できない。
1人で眠る、初めての夜だった。
こんなにも、眠ることが不安なものだろうか。
もうすぐ、わたしは、息絶えてしまうのに。
何しているんだろうか。
ネテロ会長にバレてしまった。
もしかしたらわたしは、よからぬ実験台にされるかもしれない。
利用されるかもしれない。
けれど、もう死ぬと思うと、なんだかそんなことを心配するのはバカみたいに思えてきた。
なんだっていいや。もう。
おやすみ……。
–出会い×別れ 終–