第4章 彩花。
抱きしめ眠る、もうとっくに気絶している妃とやら。
暖かく毛布も要らなく感じる程。
うわ言で呼ぶ。
「せ、ん、か⋯せん⋯か⋯⋯」
自分ではない自分を呼ぶ声に苛立ち口を封じる。
聴きたくない。
栗花落はそれから、千代の話をしなくなった。
仕事が終わるといつも通り、劉輝の事や仕事のことを話す日々。
そんな日々が二月過ぎると雪もだいぶ溶けていた。ふと、思い出し話を降った。
最近言わないなと。
ヤキモチかと思った。
けろりと。
「言えば、あの娘が苦しむ。何度も身体を水につけ湯につけを繰り返すのを見るのは嫌だからな。子を孕むわけには行かないと、何度も掻き出し何度も泣いていた、あんなのお前がさせてるとも思いたくはない、そんな姿見たくも無い。」
「なに?」
「⋯劉輝王子とお前のためだろう。頭が良い娘だね」
珠翠からも聞いてはいなかった。女官は栗花落が口止めをしたのだろう。
眩暈がした。
足速に後宮へ向かえば、部屋の隅で部屋着で窓を見つめうたた寝をする妃が一人。
「んん⋯ぁら、おうさ、ま、お疲れ様です⋯」
「お前は⋯何をしていた」
「今日でございますか?邵可から本を借りて、針をしておりました」
目を擦り、ふらふらと立ち上がる。
椅子を引くとお茶をと準備していた。
「違う、二ヶ月前の朝だ」
「二ヶ月⋯前?申し訳ございません覚えておりません⋯針でしょうか、いいえ、編み物でしょうか⋯」
「また、嘘をつくつもりか」
「嘘?私が王様にですか?そんなつもりは御座いません」
お茶をどうぞと、微笑む。
「栗花落がお前のことを口にしないのはお前が口止めしたからか」
「それは断じて違います。私は、姫様に藍州以降お会いしていません。」
「どうせソレも嘘なのだろう」
腕を引っ張り寝台に投げ飛ばす。
痛みで顔を歪めもしない。
「俺の妃で俺の物なら黙っていろ」
千代は目を見開き、王の胸ぐらを掴む。