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【彩雲国物語】彩華。

第4章 彩花。



 違う。
 頭がまた否定をする。
 そんなことを望んでいたつもりは無い。
 いや、望んでいた。 だが、なんだこの胸糞の悪さ。
 剣を鞘に戻すと髪の毛を小さく揺らし小首をかしげる。
 「おうさま、お疲れでしょう」
 その微笑みで仕事で心配をする。
 外朝と何が違う。
 馬鹿のように私を待っていた妾共のがまだマシに見えた。
 「ゆっくりおやすみください、今宵は冷えますから暖かくして下さいまし」
 その心配さえ、仕事なのか。
 そう問えばお前はなんて言うのだろうか。
 膝をつくと手を伸ばす。
 「お供致しますか?」
 いつもと変わらない声音。
 そろりと、手を重ねると酷く熱を帯びていた。
 「熱か」
 「もう、慣れっこですよ」
 「⋯⋯⋯⋯」
 「王様?心をお痛めですか?私は、王様の物ですよ、壊れないのが取得ですご安心下さい」
 違う。
 本気でそう言っている。
 自分は物だと。
 俺の物だと。
 
 キスをすれば、お前は変わらず微笑み。
 抱き上げても、何も変わらず身を任せる。
 
 
 
 これが、望んだ、妃だった。
 
 
 
 寝台に寝かせると一言も喋らず微笑んでいた。
 寝間着を脱がせると呪詛ばかり張り巡らされたら身体。
 触れる事も拒まず、微笑む。
 
 何がこうさせたのか解らなかった。
 「千代」
 名を呼んでも微笑むだけ。
 これは、ただの王の物だ。
 
 ただ、それが無性にイラつかせた。
 望んだとおりの反応、微笑みを絶やさない。
 あの日は泣きじゃくり、ダメだと言っていた、今は両手を伸ばし嬉しそうに微笑む。あぁ、望んでいた通りだった。
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