第4章 彩花。
「貴方に愛される為なら、誰だって、殺してみせるわ」
貪欲な娘だったのだろう。
今じゃ従順な犬のよう。
深くため息をつく。
瞳には誰も映していなかった。
誰も。
あの美しいキラキラとした瞳でコロコロと表情を変えたのが気に入った。
けれど⋯
ふぅ、とため息をつく。
栗花落は提案する。
「千代は随分とあの寝間着を気に入っていたようだからね、着替えさせてあげたらいい」
「⋯⋯鬼姫様あの寝間着は⋯」
「上着諸共処分した」
「は?」
「何故妃が藍家の色を纏う必要がある」
「あの子が気に入っていたんだよ!?わかる?あの子の意思で着ていたんだよ?」
「知るか」
「戩華!!!!」
何度目かの栗花落のゲンコツに額を抑えた旺季と珠翠。
夜伽の件から一週間。
あっという間に過ぎ去っていた。
千代はと言えば静かに部屋で暮らしていた。前のように逃げ出すでもなく、王を待つわけでもない。
ただただ、その幼い面立ちと、酷いやけど。白髪。
それを化粧も着飾りもせず部屋着で過ごしていた。
「お妃様⋯」
「今日も、雪が降ってるわね」
「はい⋯」
上着を着せると嫌がり、部屋着で窓の淵に張り付いていた。
夜になり月が出ると、脅えるように部屋の隅で膝を抱え眠る。
珠翠は目を閉じて毛布をかける。
ひどい熱が度々出ても。
変わることはなかった。