第1章 彩華。
貴陽につくと、羽羽が関所迄迎えに来ていて驚きだった。
彼女の後ろに控えると、目を丸くして涙を流していた。
二人は小さな喧嘩をし始めいとおしかった。
「参りましょう。御二方」
「うむ、そうじゃな」
「千代様!」
「これは私が決めたの、瑠花様に魅せられた理由でも拐かされた理由でもないの。私が選んだの、瑠花様と死を分かつと」
「っ」
黙り込む羽羽。
酷く荒れた貴陽に城までにどれだけ族に絡まれるんだとうんざりした。
まだ何事も全てが早すぎる流れ、真っ直ぐ瑠花が乗る俥を見つめた。
それでも、選んだ。
彼女の後ろに控える事。
沢山私とは話せない事、顔を沢山羽羽様にはみせるのでしょう、どうか、優しく甘い時間であるように。
ドサッ
何か重量感があるものが落ちる音と共に馬の鳴き声。ふと、体を乗り出すと、後ろにいた千代の馬が遠くで立ち止まっていた。その横には千代が倒れていた。
「羽羽!止めろ!千代、千代!!」
止まった俥から飛び出し、掛けていく。
この度で貴陽に付くまで体力は殆ど回復していた。
千代の所まであと1歩!と思うところで、彼女を誰かが抱き上げていた。
「貴様ッ」
「落し物か?」
「あぁ、妾のじゃ、うっかりして申し訳ないな」
「⋯」
「るか、さ、ま⋯」
そっと近寄ると、千代はうっすらと目を開けただ、ただ、微笑んだ。
違う、人らしく助けを呼べば痛みを訴えれば!!
「どう、され、ましたか?」
「馬鹿者!お前の方だろう!阿呆め!羽羽!医者を呼べ、その娘を手放してはくれぬか、頭をぶつけていては一大事だからの」
上着を丸め枕にし、下ろされるのをみて、そっと手を握る。
「どこを打った?」
「わかりま、せん、ただ、気が遠く、なるのです」
「千代、妾との旅があると言うのに、勝手に死ぬと?」
「瑠花様、貴方はもう、屋敷に囚われていませんね、良いのですよ、羽羽様の後ろを追いかけ追い越しても」
千代はぼうっとした瞳で瑠花を見つめた。何とも泣きそうな顔をして。