第1章 彩華。
長旅等したことも無く、迷いながら迷いながらやっとの事。
何度も失敗してやっと見つけた。
会いたかった彼女の前で微笑む。
「瑠花様」
「千代、また貴様か」
「今は間に合ったでしょう?」
彼女は悪戯っ子の様に笑いながら微笑む。
「確かにまだではあった。抑早すぎるのじゃ」
千代はくすりと微笑みながら目を閉じる。
「それでも貴方がやると言うのでしたら、まず私からお願いします。瑠花様」
ただ、唯一の瑠花姫。
長い長い付き合いだ。
ケンカばかりしてきた。
殺し合いばかりしてきた。
そんな事も飽きるほど疲れるほど。
長く長い付き合いをしてきた。
「⋯私の守る者に呪詛をかけないと言うのなら私はあなたの傍で生涯をおわらせましょう」
瑠花は目を丸くした。
王に仕えろと怒鳴っていた彼女が妥協したそれに。
「あの人を殺したのは貴方ではないとしても、天命だとしても、こればかりは変わらないですよ。」
「⋯お主は捨てることばかり選ぶのだな」
「そんな⋯事ありません」
初めに友、親、兄弟、家族、親戚、そして、想い人。
瑠花は目を閉じた。
「もう、憎しみさえ失ったか」
千代は首を降る。
「瑠花様、一緒に行きましょう。貴女が逝かぬと言うならば私も逝きません」
どうしようもない。
何百年何千年彼女はこうして時渡りをしているのだろう。
終わらない呪いは産まれた呪い。
終われない呪い。
そんな呪いに縛られている。
瑠花は瞼を下ろし少し時間をくれと言った。
五年間の歳月が過ぎようとした頃、彼女は唐突に言った。
「この屋敷は、璃桜と飛燕姫そなたに一任する。そして弱者救済、本来有るべき姿に戻るとする。」
そう言うと璃桜は眉間を寄せた。
飛燕姫は理解出来ず気を失い、璃桜はむすっとしただけだった。
「璃桜、許せ。璃桜⋯」
「千代、何度目か知らんが貴様は抜け出せぬ」
その言葉に千代は微笑んでいた。まるで、知っているというように。
「璃桜、貴方は抜け出せるわ。何度でも」
「⋯姉上に迷惑をかけるな」
「承知いたしました。」
瑠花様の手を取って、女2人長く短い旅が始まる。
荷物は殆ど無く二人で笑いあった。
ええ、大切なものはここにちゃんと持ち合わせているのだから。