• テキストサイズ

【彩雲国物語】彩華。

第4章 彩花。



 珠翠の姿が見え何か話していたが、片目が見えず顔までわからなかった。
 目を閉じ、女官が下げようとしていた寝巻きに起き上がる。
 「その、その寝間着を返してください!!!」
 思いのほか声が大きくて驚く。
 「⋯⋯主上が、上着も、始末しろと⋯」
 「おう、様が⋯⋯⋯⋯そう、で、す、か」
 ぱたりと、倒れる。
 痛む子宮。何度も何度も苦しくなり途中意識は無かった。
 眠気に倒れ込む。
 お仕事だから、妃の。
 「申し訳ございません⋯大きな声を出してしまい⋯」
 「⋯⋯お妃様」
 「珠翠、藍家に文を⋯」
 「⋯それも、出来ません」
 涙が流れた。
 小さな枯れた声で、そぅ、とだけ呟いていた。
 何も食べたくないと言えば珍しく静かに引き下がった女官達。
 静かな部屋だった。
 ただ、お腹を抑え膝を抱えた。
 目を閉じたら、戩華がいる。
 優しく強く微笑む戩華。
 貴方を救って貴方の世界を守れて私は終わったと思っていたのに。
 あぁ、これもきっと人の死を捻じ曲げた報いなのだ。
 目を閉じて微笑む。
 「戩華⋯せん、か⋯⋯」
 近づくために始めたのにどんどん遠くなる。あぁ、あなたのくれた呪詛が悪戯をしているのね。
 それでも構わないと思ったのに⋯
 遠くなりすぎて表情も声もよく思い出せないの。
 ぎゅっと毛布を抱きしめ眠に落ちる。
 「たすけて⋯つき⋯⋯⋯⋯」
初めて愛された気がしたから。
 
 
 
 
 
/ 189ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp