第4章 彩花。
貴陽につくと、千代は女官に迎えられ泣かれてもいた。主上の目があるからだと、優しく慰める。邵可と静蘭は家に戻り旺季も眉間にシワを寄せ仕事に戻っていた。栗花落は何故か怒って私室に戻り、王だけが千代を送っていた。その事にも女官は驚いていたが、千代の服装にも驚いていた。
美しい禁色である藍の寝巻きと上着。
主上を見て千代を見てと女官は言葉を紡げずにいた。
やっと解放され、部屋に二人きりになる。
椅子に腰をかけると、体温が上がっていると気がつく。
あぁ、また熱が出ているのかと思っていると王がじっと見つめてくる。
にこりと、笑みを浮かべ堪える。
「主上、お疲れでしょう、私にお付き合いさせてしまい申し訳ございません⋯お仕事に差し支えが無いのでしたらゆっくりとおやすみください」
「違う」
「は、い?」
「あの三馬鹿の一人に何を言われた?」
少し考え思い出すことは、月に言われた想いの言葉達。
顔が赤くなり、眉を下げた。
「帰ると申したら私を閉じ込めてしまいたいと、大層寂しがって下さったのですよ」
「⋯俺に嘘をつくのか」
「嘘?私が何故王様にそのような事を⋯?」
「っ⋯もういい、付き合え」
千代は首をかしげていた。突然立ち上がったかと想えばひょいと抱き抱えられ驚いていると寝台に投げられる。
覆いかぶさる王にはっとするが、遅かった。
「王様っ、王様!いけません!王様!」
何度呼びかけても聞くことは無かった。
「もう、世継ぎは要らぬでしょう?っん、こんなことより、おやすみください、王様」
「機嫌が悪い、お前は黙っていろ」
その瞳に千代は泣いているしか出来なかった。
脱がされてしまった藍色を見て手を伸ばす。そろりと引き寄せ、藍の寝巻きに顔をうずめる。
月、たすけて。
たすけてほしいよ、月、月。
「つ、き⋯⋯ぃたぃ、むね、が、いたい」
どうしたの?って眉を下げ問うのが目に浮かぶ。
「喋るな」
ビクリとし、藍の寝巻きを引き剥がされる。
ただ、ただ、王が怖く見えた。
それでも、これが私の仕事だと言うのなら。
「はい、おう、さま⋯」
この為に戻ってきたんだろう。
目が覚めると、暖かく、涙が零れた。。