第1章 彩華。
「ねぇ、貴方が私のわがままを聞いてくれるわけ?」
男は目を丸くして眉間を寄せた。
「私より先に死なないで」
「⋯」
「私がもう1度やり直してくるわ。」
そっと、手をつかむ。ゴツゴツとして硬い掌。涙を落とす。
「ねぇ、貴方、私に言って。何時もみたいに」
ぎゅっと抱きしめると小さく震えていた。
「何度でも、お前は好きにしろ。俺はお前を勝手に愛してやる」
彼女は男との剣に刺さる。
小さく笑いながら光り、泡になった。
「行ってきます、戩華」
それを見て目を閉じる。
何度目かの別れなのだろう。
彼女の別れ。
私が貴方を助けると泣きそうな顔で睨んで見せたのが昨日のよう。
あぁ、何度でも。
やり直せるならお前は満足が行くまでやればいい。
ふと、視線の先には見なれた暗鬼。
「糞王、今、此処に誰かいませんでした?」
「口が悪いぞ糞ガキ。誰も居ない。見てわかるだろう」
「姉上が居ましたね」
「姉?邵可、なんの話だ?」
思い出も記憶も曖昧でしょう?
それらを証明出来ないの。
だから、貴方が言って、何時もみたいに。
お前に姉など居ないだろうと。
馬鹿馬鹿しく不愉快に言ってあげて。
あの子達は優しいから⋯ね?お願い