第3章 彩歌。
「栗花落様、はい可愛い生徒さんを拾いましたよ」
「千代!私を売るとはひどいぞ!」
「劉輝様?売る?お帰りになられただろうに。さ、勉学に戻りましょう」
「嫌だ!!まだ父上と⋯!」
千代は目を見開いた。
と、同時に納得した。あれは王の暇潰しで私への嫌がらせだった。けれどどうして劉輝がその場に居たのかと思えば、彼には、父との遊びだったのだろう。
劉輝を再び抱き上げ瞼にキスをする。
「寂しいですねぇ、千代とはあそんでくれませんか?」
「あ、遊ぶ⋯!」
「千代!」
「栗花落、貴方も着替えてお出かけしましょう、ね?」
栗花落と劉輝は首をかしげていた。
千代はクスクスと微笑んでいた。
王はそれをこっそり見て眉間を寄せた。
官吏服を脱ぎ下町を回るに目立たない服装に着替えた一行。
俥に乗ってゆっくりと向かっていた。
「千代!どこに行くのだ!?あれはなんなのだ!?」
「落ち着いてくださいまし。」
「千代、アイツに怒られるぞ」
「構いませんよ、ほうら、劉輝。私の話聞いてくれますか?」
千代の膝に手を着き見上げる瞳は輝いていた。
「うむ!」
「今から向かう場所には劉輝より幼い子が居るの、仲良くしてくださいね。そして、その子と今日はお勉強をして頂きます。よろしいですか?」
劉輝はぽかんと口を開けている。
ふにふにと唇をつつけば、青ざめたり赤くなったりと忙しい表情に千代は抱き寄せる。
「栗花落師も、きっと、いつもより優しく教えてくださりますよ、きっと」
「ほ、ほんとか?」
「えぇ、千代は嘘をつきません」
ぱぁっと明らむ顔に何度も救われる。
頭を撫で、目を閉じる。
優しい子、何処までも、優しく、優しすぎる子。
とても、似ているのよ。