第2章 彩香。
それはある日の事。突然だった。
お嫁さんが文を受け取り神妙な顔をしていた。
すると、少し考えた様子で静蘭を呼び寄せた。その文を見て真っ青な顔になったかと思えば涙を流し座り込んでいた。
その様子を満足気に見つめやっと、私の出番だった。まだ小さな秀麗は弟が見ている。それをいい事にそろりと和から抜け出し、妻の後ろに行く。
文を見て驚く。
「邵可、もう思い出さぬか。瑠花姫に一生取られたままになるぞ」
その綺麗な文字。
『ご無沙汰しております。薔薇姫。我が自慢の弟とはどうでしょうか。最近娘が産まれたとお聞きしましたので、私の静蘭がよく役に立つかと思います。
そんな事より、数日後私は紅家の直系として縹家の直系として、王に嫁ぐ事になりました。正妻にされるらしく縹家だけだと、何かと後後困る事もあるので、正しい紅家も使わさせて頂きます。との事を、邵可に何卒上手くご説明ください。
後日薔薇姫様にはご挨拶に伺います。
私の大切な息子と弟をよろしくお願い致します』
大切なものを捨ててでも、守りたい。
彼女の矛盾はまるで王政のよう。
いつも、置いていかれて、いつも帰りを待っていた。
いつも、いつも、優しく抱きしめてくれて、アイシテルとワスレナイデを繰り返し泣いていた。
「千代⋯姉、上」
「えっ、母上は、旦那様の姉上!?しかし、縹家の⋯」
「千代はな、邵可等を守るため。捨てたんじゃよ。そして、妾と王を守るため、紅家を捨てたんじゃ。縹家に愛されているあの子は瑠花姫様のお気に入りじゃ。そして、静蘭が息子になり護るために、元の紅家が必要になっただけじゃ」
「え!?」
「今はわからんで良い、静蘭も妾の息子同然じゃ、愛おしい子よ」
邵可は文を持ち兄弟に寄り添い、秀麗を囲い泣いていた。
千代が口うるさく言っていたのを思い出す。
兄弟仲良く支え合うのよ。
その言葉がやっと、理解出来た。
逢いたくなった。
愛する母上に。