第2章 彩香。
夢の中では懐かしい夢を見た。
私の言うことなど全く聞かない王の死を前に何度も泣いて、旺季を呪い何度も泣き散らした。
鬼姫は私を馬鹿だと言い、旺季は不愉快だと蹴散らし、王は私の話など聞きはしなかった。何度も弟達を目の前で殺され、何度骸を抱えただろうか。
その度その度悲しむだけ土を掴み睨み悔やむばかりだった。
それでも、愛していた。
「ん⋯霄⋯⋯毛布をくださいまし」
もぞりと身体をよじる。
随分とあの狸はいい場所で寝ているらしい。フカフカの敷布団は脚をすりすりさせる。
肌触りは最高だ、あとは毛布があれば文句は無い。
あの狸め、すべてを知ってた等⋯なんて意地悪な。
「霄、毛布くださいまし⋯もう少し⋯眠りたいんです」
人の気配に、ふと、目を細め振り返る。そこには優雅に座るはこの国の王。
千代は脚を引き寄せ座り込む。
「!?」
「霄の部屋ではないからな、霄はおらぬ」
「!?⋯!?へ?」
「何を呆けておる、余の寝所だと言っておる」
千代は立ち上がり、視線を泳がせ苦笑いを浮かべる。
「申し訳ございません⋯失礼致します」
頭を下げると、部屋を出ていこうとする。
「余の妃になるといい」
「⋯は?」
「一晩考えたんだぞ、霄と話した結果お前を余の妃にと言った」
「⋯たかだか一晩?」
千代は振り返り微笑んでいた。
王としてはそんな反応を想像をしていなかった。
「一晩で私の未来が決まったのですね」
「何が言いたい」
「いえ、私にはもう、誰もおりません。お好きに致したら良いかと。貴方様は王でございます故。では失礼します」
千代は部屋を出ていく。
それを見て胸騒ぎがした。
あれが何をそんなに怒っているのかが理解できなかった。
廊下で栗花落が騒ぐ声にため息をつき腰を上げる。
また、劉輝と鬼ごっこでもしているのかと思い部屋を出ると、女人をかき集め、誰かを呼んでいた。
何事だと、近寄ると泣きそうな顔をした栗花落。
「何事だ」
「⋯この馬鹿戩華!だから反対したんだ!!!」
「なっ、開口一番それはないだろう!」
ふと、彼女の腕には血を吐く娘。
胸には同じ字を付けているのが見える。
「この字⋯私達についているものに⋯」
「あ、あぁ⋯」
「なに、特別ではありませんよ。」