第2章 彩香。
後日、清苑公子は千代の元に下る。そして、薔薇姫と出会った邵可は数年の月日で結婚をする。教育係となった鬼姫から逃げ惑う小さな公子は兄上を浮かべ、鬼姫と母を似せていた。それでも厳しく師として劉輝に向かい合った。
そのようすを時々戩華は見に行くのが日課になっていた。
一方の千代。
まだ、御史台ですこぶる元気に働いていた。
「寒いですねぇ」
姿絵を小脇に抱えながら長官の元に戻りたくないとぶつくさ言っていると、ぼソリと。
「縹御史、何をしているんですか」
「あ、皇毅、そうだね、また、貴様は姿絵を増やしてどうするんだって長官の声が聞こえてね」
「最もでしょう、何故そんなに皆縹家にこだわるのか」
「私もそう思うさ、今戻っても飛燕姫に顎でこき使われるだけだって言うのにね、あの縹璃桜が飛燕姫の怒鳴り声には腰を上げるんだから、誰が敵うんだっつーの」
「⋯⋯そうですよね」
「まぁ、幸せな夢ぐらい見ていればいいさ」
「そんなことより仕事をしてください」
「ハイハイ」
外を見つめていると不意に戩華が空に浮かんだ気がした。
最近はよく眠れず瑠花様に怒鳴られ可愛い息子に怒鳴られる日々。
そろっと、廊下から降りて優しく微笑む貴方に手を伸ばす。
「ねぇ、貴方、私、もういいかしら、貴方は優しく笑うようになったわ、えぇ、とても幸せうなの」
それがどれだけ大切なことか、先月教えて貰った術式はうまく作動している。
これで、呪術等で戩華を苦しませることも出来はしない。
いつか、約束した。
貴方が幸せなら私は何もいらないと。
ええ、きっと今がそう。
今がそうなの。
「貴方、それでも、逢いたいわ」
醜い体を土にぶつけるように彼女は倒れた。