第2章 彩香。
「千代、千代!」
「叔父上⋯もう暫くしたらゆきますから」
「主上がお呼びだ」
「待たせておきましょう。子供たちがまだ眠っていませんから」
もどかしげな声にちらりと千代を見る。
優しく頭を撫でられ心地よくなる。
「子供は子供でいいのです。大人の世界はまだ早すぎますから」
「公子とはそういうものだ」
「あら、叔父上は厳しいのですね、私はこの子達にはただ幸せになって欲しいだけですからね、今際の時少しの後悔と、たくさんの暖かい思い出を引き連れてほしい。そう思いますよ」
甘い香りがする。
彼女の香りは何処か懐かしい。
意識がうつらうつらする。
「大丈夫護るから、大好きよ」
泣きそうになる。
その声に何処までも安心して深い睡眠に落ちて行く。
小さな弟と眠るのはとても心地よかった。