第11章 才華。

　「怖い顔をして」
　「静蘭はやれないの⋯！」
　「何故そうまでして⋯」
　「悪い？精一杯の母親としての事です」
　「そんなに此処は追い詰められるのか」
　「知ってるくせに⋯霄⋯抱きしめてて、もう少し」
　「⋯⋯あのなぁ」
　「あの子を抱きしめて怖かったのよぉ！！」
　霄はぐちゃぐちゃの千代の泣き顔に参ってしまう。
　この娘をどうしても突き放せない。
　抱きしめてやると震えながら泣くから。
　
　「千代、それでも、蒼姫が静蘭を望むならくれてやれ」
　
　その声に千代は顔を上げた。
　子どものように顔をぐしゃりとして泣いているのを見て、その手が霄を掴んでいるのを見て眉間を寄せ手を離させ抱き上げる。
　「構わん、お前は親バカもいいところだ、首輪をつけるのは劉輝だけにしろ」
　「っ～！」
　「それとも、この俺に着けるか？」
　千代は目を見開いて戩華の首筋に噛み付く。
　「着けられるのでしたら、最初から着けてます！！！」
　「ははは、叶いませんな」
　「俺から目を背けるな」
　「⋯嫌」
　「千代、お前はあいつの母親ではないだろう？俺の妻だ」
　
　
　
　
　
　
　
　だって。
　思ってしまったから。
　
　
　
　ああ、この子を抱きしめられて良かったと。
　
　愛おしい子だと。
　
　生きてほしいと。
　
　
　
　
　暖かく柔らかい娘だと。
　
　
　愛おしく感じてしまったからぐちゃぐちゃなの。