第11章 才華。
夜が耽る前、其れは姿を見せた。
「⋯千代⋯⋯」
「ん⋯あら、来てくれたの?」
ベッドの淵に座り蒼姫を眺めていた千代は視線を上げる。
「何故呼んだ?」
「⋯⋯暇なら、この子のそばに居て」
「⋯⋯」
「静蘭は私の護衛にしてもらうわ」
「⋯⋯⋯⋯ひどい母親も居たものだな」
「そう?母親になったつもりもないですよ」
立ち上がると龍蓮の頭を撫でて、宜しくねと続ける。
「何処に行く」
「人払いをして、まだやる事があるのですよ。龍蓮、ソレはあなたの好きにしていいわ」
「っ!」
立ち去る音。
悪魔のように微笑み、目を閉じる。
「姫様」
千代は立ち止まる。
「遅い⋯」
かけよると、崩れるように倒れる。