第11章 才華。
力強く抱きしめる等知らない、声を我慢して泣くなんて知りらない。
「力の使い方を知りなさい、それまで私の真似事も許されません。」
「っ!」
「少し深呼吸しなさい」
深呼吸する娘を抱きしめ、ぼうとしてしまう。
ぎゅっと目をつむり、ぱちりぱちりとする。優しく髪を撫で、きっと後悔していないだろう娘に淡々と説教をする。
とんとんと、背中を叩いていたせいかすぅすぅと寝息に代わり、そろりと枕に寝かせる。
ハッとしたように目を覚ましぎゅっとしがみつく。
「貴方の父は、とても、強く賢く人を惹きつける方でしょう、二人の兄も同じく秀でている事があるわね、けれど、貴方はいつまで何も無いままでいるの?」
「!」
「自分の力量もわきまえずこんな事をして、もう少し自分のあり方を考えなさい」
「⋯⋯はい!」
「もう少し休みなさい」
それと、と続ける。
「あまり、静蘭に甘えるべきではありませんよ」
目を丸くして視線を逸らす、額にキスを残し体を起こすと静蘭に声をかける。
「此処は良いわ、部屋に戻って眠りなさい」
「母、上」
「水をもらって行くのよ。」
静蘭は何も言えず俯く。くしゃくしゃと髪の毛を撫でてにかりと微笑む。
「頭がスッキリすると思うわ」
「⋯はい」
立ち上がると確かに重く何かが身体に乗っかっていたような感覚は無くなっていた。
多少はふらつくが、先程の気だるさ程ではない。
珠翠から水をもらい口にして部屋を出ようとして振り返る、千代の視線は蒼姫に向いていた。
それを見て何故かもやっとしたものを覚え部屋を後にした。