第11章 才華。
部屋に入ると静蘭が看病していたのか、ぐったりとしているのを見て頭を抱える。
「お、お妃様?」
静蘭の額に触れ首元に触れると目を覚ます。
「静蘭、立てますか?」
「⋯は、はう、え?ぁ、いや⋯」
「手を離しなさい」
そう言って乱暴に蒼姫から手を離すと大きな身体の静蘭を抱き上げる千代に女官は顔を真っ青にする。
当の静蘭は状況をまだ把握していないのか目を擦っている。
そろりと、ソファーに下ろすとちゅっと、キスをしていた。
「おはよう、私の子安静にしているのよ」
「!?!?!?!?」
千代は素早く立ち上がり、蒼姫の傍に寄る。
私から見たら、この子は。
まるで、戩華の生き写し。
汗でへばりつく前髪を撫でる。
頬を真っ赤にして辛そうにしているのを見ると自然と眉間が寄る。
「珠翠、香を」
「はい」
「戩華には改めてお説教をしなくてはなりませんね」
初めて触れる子供の頬。
暖かく、柔らかく、情が溢れそうになるのをこらえる。
「蒼姫、蒼姫!!」
ぺしぺしと頬を叩き起こす。
「ん、ん、、ん」
目を開けるが、虚ろの瞳。
「蒼姫、起きなさい」
「⋯⋯んぅ⋯」
体を起こすが、起きてはない。
もう一度、頬をぺしぺしと叩きこちらを向くのを見て抱きしめた。
「蒼姫、起きなさい。母にどれだけ手を煩わせるのですか」
「⋯⋯ぁ⋯?ぁ、あ⋯」
頭を撫でる、静蘭に似た髪の毛、優しい瞳はきっと、あの馬鹿に似たのだろう。
真っ直ぐで融通が効かないのは、戩華の血筋の証だ。
「蒼姫、分かりますか?」
「は、っ、はぁ」
そろりと、離れようとすると抱きしめられる。もう一度抱きしめる。
「蒼姫、戩華に利用されるなんてなんて事なの」
「っ、ぁっえっぐっずっ」
「私と同じく出来ると思ったの?私の血を引いてるから出来ると思ったのですか?それとも、考えず甘えんぼうで生きてきたのですか」
首を振ってぐずる娘。
記憶の中の蒼姫は赤子のままだ。