第11章 才華。
「な、に?」
千代はぴくりと、城を見る。
「どうした?」
「今、ズレたわ」
「⋯⋯」
「今確かに時間がずれたわ、どういうことですか?戩華、あなた誰にこんな事させているの?何が目的なの?」
「俺は知らんな」
栗花落がなにかしたのかもなと、言えばお茶を啜る。
空を見上げる男を見て眉間を寄せた。
「それに、そんな術俺に出来ると思うか?」
「⋯⋯璃桜なら⋯」
「城で起こすわけがないな」
「そう、ですよね⋯」
水饅頭を食べながら考え込む千代を見てにやりとする。
計画通りだ。
上手くいったのだろう。
歴史を変えることは千代も蒼姫もできない、出来るのはすり替えることだから。
千代は自分の位置を栗花落にすり替えた、不要な記憶をかき集め完璧に。
それをただ、元に戻しただけだ。それは、千代がした事より簡単な作業だろう。
「饅頭、あげませんよ?5杯も汁粉を食べたのですから」
「一口もか」
「仕方ありませんね、一口ですよ?」
あーんと千代が口を開けて見せる癖。劉輝や清苑によくやっていた。
あむっと、串に刺さった水饅頭を一口で食ってしまえばワナワナと、震えていた。
「私の分返してください!!」
出会う時代や立場が違えばこうして普通の夫婦で居られたのだろか?
「汁粉のが美味かったな」
「あぁ、私の、水饅頭⋯」
「次はあれにするか」
「肉まんですね!そうしましょう!」
この無邪気な笑顔を独り占めしようとした罰なのだろう。
きっと、いつも、どの世界でも、救われていたのだろう。