第11章 才華。
陽が沈む少し前。
物々しい空気の離宮に主上まで様子を見に来ていた。
巫女装束を纏った妹が書を読み上げ始め、それを復唱するように妹を囲う数人が声を上げた、ふと、少し離れた場所へ目をやると何故か静蘭と龍蓮はぐったりとしている。
妹の前にはたくさんの石が転がり箱から溢れている。
眉間を寄せる栗花落の隣に立ち小さな声で耳打ちをする。
「な、何事なんだ?」
「あぁ、主上⋯⋯少しお静かに⋯時間が無いんだよ」
「時間が無い?」
「あぁ、戩華がもう少し前に言ってくれれば万全だったんだけれどね」
「父上が関係しているのか?」
妹の背中を見ているのは何故か嫌な気がした。
足を踏み出す。
「劉輝」
「いけない気がする」
「⋯⋯あぁ、お前は⋯⋯千代に甘やかされた子だったな」
劉輝の手を掴み苦笑いを浮かべる。
「⋯⋯それをしては、誰かがまた、苦しむんだ」
「すまないね、主上⋯」
力が抜けて座り込む。
誰かわからないが、いけない。
だって、あの笑顔はだんだんと減って⋯悲しい顔をさせていた。
きっと今で良い、今でいい。
ポロポロ涙がこぼれた。
「蒼姫⋯⋯それは⋯駄目なんだ⋯」
歌のように妹の声が澄んで聞こえた。
意識の狭間に美しい笛の音も聞こえ、暖かい涙が零れるのがわかる。
いけない、また、悲しませてしまう。
また、甘えてしまう。
また、泣けなくしてしまう。