第1章 彩華。
一方の千代は殺気を飛ばし歩いていた。
姿絵の縹官吏はいつもの柔らかさは何処へ言う面持ちで廊下を行く。誰もが王に呼び出されたのだと察し声を掛けるものなど居なかった。
一例と共に入室の声をかけ入る。
「お呼びだとお聞きしましたが」
随分と念入りな人払い、そして、部屋の前に鬼姫。
千代は眉間を寄せた。
「あぁ、珍しい事もあるもんだな、姿絵の縹官吏が姿絵を持っていないとはな」
ひとつ持っていくか?と渡された姿絵を手にして眉間を寄せる。
「そんな事でお呼びしたのですか?」
覇王と呼ばれた彼に忌々しげに吐き捨てる千代にぴりっと空気が乾く。
「いいや、違う」
ひらりと渡された書類には、目眩がした。
なんて事、グシャりと握り潰し王に投げつける。
「こんな、こんな事をする必要など何処にありますか!!下らない!」
「これ!千代!王の前だぞ!」
「王?こんな、お遊びをする必要は無い!貴方もご存知であるはずです。」
「あぁ、くだらんな。」
「今がどんな状況かご存知ならば、こんな下らないことに興じているべきではありません。」
「⋯⋯しかしこれは決まりだ、決定したことをどう覆す。余の一声でどうにかなる事ではないのも貴様が喚いて状況が変わる理由でもないのも理解しているだろうに」
千代は眉間を寄せた、目を閉じ考える。
小さくため息をつくと、ニコリと微笑む。
「二位が二人になりますよ。お覚悟を」
「まさか、お前が出ると?文官のお前が」
「それは思いつきもしませんでした、ですが強行するならと言う例え話ですよ。まぁ例え出るとしても私は化け物でございます。どうとでもなりますから。」
「ふんっ勝手にしろ」
頭を下げ、バタバタと立ち去るのを見て霄は額を抑えた。
「王、あれは何ですか」
「見ればわかるだろ、只の歪みだ」
死を纏い天命を跳ね返し、ただ前を見つめる。
「足掻けばいい、所詮は小娘だ」