第10章 彩稼。
天女の様に雪と戯れていた。
酷い顔の火傷、赤らむ頬に白い息。
はふ、はふと白い息を吐きながらも雪まみれになりながら遊んでいた。
最初は小さな娘かと思えば、よく見たら、綺麗な娘に見えた。
部屋着で外で遊ぶほど阿呆なのかと思えば、瑠花の娘だと言い張る。
「何処も似てねぇだろうに」
ボソリと吐き出す本音。
ふと、侍女たちの声が聞こえる。
「千代様がずぶ濡れよ!」
「大変!湯浴みに行かせねばなりませんよ!!あの方昨夜から全く熱が下がっておりませんから!」
「瑠花様は千代様には甘いですからね」
「庭で雪遊びでもしてたの?」
「えぇ、全身全霊で遊んでいたわ」
「な、なっ!それは大変!急いで支度を整えるわよ!」
「ですが、結界が⋯」
「⋯⋯⋯それでも、瑠花様の大切な大切な戦友ですから⋯最期まで尽力を尽くしましょう。」
バタバタと侍女達が走り出す足音を聞いてふと、、考え込む。
瑠花の、戦友?
飛燕姫なら分かる。
だが、千代?
聞いたこともない。
侍女が知っていて俺が知らぬ筈はない、ましてや瑠花の交友関係など⋯知らぬわけがない。
ふと、もぬけの殻の侍女室に入れば驚く。
一つの紙に目を引かれる。
その下に連ねられた名前に自分や栗花落が含まれていた。その名前を見て共通性がない事に眉間を寄せる。
その名前の下には色が付けられていた。
「なんだこれは」
全く理解できない。
これが何故侍女室に貼ってあるのかが分からなかった。
「まだ居たのか」
「⋯瑠花、これは何に使っているんだ」
「さぁ妾は侍女の遊びは疎くてな」
「はぁ?お前ともあろう奴が遊びには疎い?笑わせるな」
「本当じゃ、娘のことで頭が今はいっぱいじゃからな」
遠くで侍女の足音が聞こえる。
娘と呼ばれた千代の姫様と呼ぶ声。その声に引き寄せられるように歩き出す瑠花は何処嬉しそうで、悲しげだった。
その表情とその不安定な幸せ感を何故か、何処かで感じたことがある気がしてならなかった。
それから時々瑠花の屋敷に忍び込むことが増えていた。
だが、娘の目に映ることは無かった。
酷く冷えた夜だった。