第10章 彩稼。
娘が遊んでいた場所は土が見えていた。
むき出しに、まるで溶かされたように。
「用は住んだか?なら去れ」
「結界など何故必要なんだ?」
「もう、王都では出来ぬ。そうさな、藍州へ旅にでもゆくとするか」
そう言いながらその場を離れた。
王の心は完璧。
瑠花は腹ただしくて、ただ、苦しかった。
何故手放した。
何故捕まえて置かなかった。
何故貴様は千代にあんな呪いをかけた。
何故止めなかった。
何故、何故、何故⋯
「ひめさま」
柔らかいその声に顔を上げる。
「千代⋯⋯心を、どうした?」
にんまりと微笑みながら庭の外を指さす。
「月に帰ってしまったのよ、きっと」
「なんじゃそれは⋯」
「ふふ、姫様⋯今日は随分と、世界が、キラキラなのよ」
微笑んだかと思えばふらりと倒れる。侍女が支えて部屋に運ぶように命ずる。
壊れていく結界。
きっと、この冬は千代には耐えられないかもしれない。