第10章 彩稼。
「姫様、もうすぐお迎えが来る気がするのです」
夕食後嬉しそうにモジモジと話し出す。
「何を根拠に」
「王様が、戩華が⋯⋯最近は浮気者と、ずっと訳の分からない事を言っていたのですが、最近やっと戻ってこいと言ってくれるんです」
頬を赤らめる千代。
「もう、嬉しくて⋯私、なんだか心がぽかーんって軽くなったんです。だからきっと、戩華は来ますよ」
宝箱はいつの間にか彼女の手元にはなかった。
鍵はぐるりと呪いのように何個も付けられていたあの重厚な宝箱。
瑠花は何も言えず、目を閉じた。
「やっと、私の戩華の元に帰れるんですよ、姫様っ」
「⋯そうか⋯⋯そうなっても妾とまた会ってくれるのじゃろう?」
力強く頷く千代に瑠花はふわりと微笑む。
瑠花は千代を抱きしめて頭を撫でる。小さな子供のように。
白詰草の庭に行きたいと再び言うまであと数秒。
ひらりひらり靡く部屋着で何処までも彼女は笑顔で自由に。
羽根を休めている。
遠くへ飛び立つために。