第10章 彩稼。
朝餉を食べながら戩華は千代を見つめて呟く、そう言えば文が来ていたと。
千代は小首をかしげる。文なら千代が管理していた、それを何故戩華が最初に受け取っているのか。簡単だ、戩華宛に来たのだろう。だが、そうするともっと不可解だった。戩華と千代がこんな長屋に居るとは劉輝や栗花落、霄ぐらいしか知らない事だから。
なのに何故戩華宛に文が来るのか。
劉輝なら私にだろう、なら誰が?
面白くなさそうに懐から取り出し千代に差し出す。
肘をついてにやりとする。
「俺宛ではない、お前宛てだ」
なら何故貴方が手にしてると、思いながら文を袖にしまう。
「今見ないとお前は後悔するだろうな」
なんの助言だと怪しみながら取り出し開封する。
誰からかは知らない、中身を取り出し驚く。
「へ?」
戩華は眉間を寄せ、朝餉に視線を戻す。
千代はぽろぽろと涙を落としていた。
それが酷く胃をかき混ぜ、喉を乾かせた。
いくら千代が自分はあなたを愛している、貴方のものだと言っても、千代が求めるのは違う。
妃と知っても閉じ込めてしまいたいと言ったあの男だけ。
「⋯⋯戩華、貴方⋯見たのですか」
「中身など知らん、だが、此処は王宮ではないからな⋯」
文なら届く、出せる。
千代は目を丸くして大切に文を降り封筒に戻すと懐に入れていた。
「浮気者め」
「は?」
「そう言えば蒼姫は藍州に着いたらしい。護衛曰く、お転婆過ぎるとか何とか書いてあったな」
「それは私宛の文でございます!!」
静蘭からの文は定期的に届いていた、昔から。それをこの人は勝手に!
怒りを沈め額を抑えた。
「お前でも蒼姫が気になるのか?それとも藍州だからか?」
「ただの静蘭の日常ですよ」
嘘つけ妖怪め。と睨むが妻は興味を失せたように黙々とご飯を食べ始めていた。
妻をからかうのも楽しいが、こうして隠されるのは少しばかり面白くなかった。