第8章 彩火。
「へ?」
栗花落は間の抜けた様な声を上げてしまった。
にこにことする蒼姫。
「書物を沢山読んで藍州の有名なお土産をお勉強しなくちゃ!あぁ!旺季様にも!」
「旺季はやめときなさい、府庫、府庫かぁ⋯そうだね、行ってみましょうか」
府庫ののほほんとした管理人がどれだけ驚くかを想像しながら着替えの仕度を手伝う。
可愛い子には旅をさせよとは言うが本当に旅をさせるとは、栗花落は蒼姫を見ていると本当に可愛く我が子のように思えてならなかった。
戩華め、千代が傍に居ないとろくな事を考えないな。
千代が一日中傍にいると大人しい飼い猫のようだと言うのに。
それでも、彼は変わっていた。
自覚しているかは定かではないが、言葉にするほど、彼女を傍にと望んでいることを。
今も変わらず彼女は恋愛を戩華には向けていない。
そう、変わらず主従なのだ。
妃役、彼女は今もそう思い込んでいる。