第8章 彩火。
あの王は。
悲しみと孤独と愛のない場所に不慣れなのだと。朝議は戩華王の臣下としての者ばかりがあつまり、彼にとって苦痛でしかないのだろう。そんな事言っても玉座に座ったならそれらしくするべき。なのに、出来ない。
甘ったれた王だと、眉間を深くした絳攸だった。
「で、蒼姫何を言われたんだい?」
栗花落はそれが気になって仕方がなかった。どうせろくなことでは無いはず。
蒼姫の部屋に戻ると早速聞いてみるが何故か眉間を寄せていた。
「栗花落様、父上は覇王なのですよね?」
うーん。
どういう話の流れだろうな。
「お強いのですよね?誰より」
何が言いたいのか解らず椅子に座る蒼姫の正面に座る。
「そうだね」
「⋯姉様、私⋯⋯父上から、託されたのは母上の心なのです。」
意味がわからなさ過ぎてちょっと待って、と笑顔を貼り付け考えた。
何を言っているの。
戩華は娘に何を言った?
託された?
母の心?千代の心ってことだよね?
「⋯⋯蒼姫、それは何処にあると?」
「⋯詳しくは⋯ただ、藍州に行けば解るとしか⋯ですが、それはそれは奇妙で、同じ顔をした三人のどれかが母の心を奪ったと⋯」
栗花落は鉄壁の笑顔で堪えた。
それはそうだ、蒼姫は何一つ嘘を言われてもいなければ騙されてもいない。
ただ、一つ。
戩華にからかわれているのは、それは蒼姫と千代の関係改善に何も関係がないと言う事。
ぎゅっと蒼姫の手を握る。
「⋯そう、なら長旅になるだろう。蒼姫行く前に瑠花様の所に寄りなさい。必ずだよ」
「るか、さま?」
「そうだ、そして、今話したこと、全てをちゃんと話すんだ。きっと、いい助言を頂けるだろう。これは、戩華には出来ない事だからね、彼女の助言と、兄上にちゃんとした護衛をつけて頂きなさい。」
わかったかい?と繰り返す栗花落に頷く。
まだ幼い子供だと言うのに戩華は何を言い出すかと思えば。
それでも、知るべきと戩華は判断したのだろう。
千代は向き合わないから、この娘が決めたらいい。母と、千代とどう向き合うのかを。
その結論に誰も反対はしないだろう。
「姉様⋯⋯その⋯あ!府庫!府庫に参らねば!」