第18章 色褪せぬ想いは大空へ消えゆく
病弱で入退院を繰り返していたという日向菊さんは既に亡くなっていた。彼女の娘さんから一通の封筒を受け取り内容を確認する。
カヅチへ
このような形になってしまってごめんなさい。私は貴方に別れの言葉もなしに離れ離れになってしまったことをずっと後悔していました。
あの森へ行こうにも私の体は病弱で隣町に移ってしまった今、1人であそこまで行くのは難しかったのです。
それから数年後に体調がだいぶ良くなった頃、1度あの森へ行ってみたのですが…森の妖たちは貴方の力が暴走した際に祓い屋にどこかへ封じられたと言われました。あの時、私のせいかもしれないと思いました。
私は貴方にとても酷いことをしてしまった。約束を破り、あまつさえあなたに会いに行ったのが封印された後で謝ることも出来なかった。
貴方は私にとって初めてできた友人であり理解者だったのに。
だから私は娘にこの手紙を託します。どうかいつか貴方の元にこの手紙が届くことを祈って。
最後に、私は貴方が好きでした。とても短い間しか会えなかったけれど、これは確かな想いです。貴方に出会えて私は幸せでした。
「…これって」
「ヒナギク…お前…」
この文面から察するに、日向菊さんは自分の死期が解っていたのだろう。直接伝えることが叶わないと悟ってこうして文に認(したた)めた。
こういう形になってしまったが、彼女の思いを知った今カヅチは何を思っているのだろう。
「カヅチ…」
黙り込むカヅチになんと声をかけたらいいのか考えあぐねていると、目を閉じたままカヅチが顔を上げた。
「――おもい、だした」
「思い出したって何を…」
「我が封印された理由だ」
そして私たちに背を向けて数歩離れると、ポツリポツリと話し出した。