第17章 思い出を辿って
昼休みになり、そそくさと資材庫へ移動した。仕方ないから今日はここでお昼だ。
「さて。それでまずはどうしてあなたが封じられていたのか。それは覚えてる?」
「覚えておらん」
「うーん…。紅月はどう思う?」
「我からはなんとも。ただ、鍵となるのは間違いなく"ヒナギク"と封印された理由だろうな」
ヒナギクさんのこともそうだが、問題は何故この子が封印されなければならなかったのか。
力が制御出来ない程強大だったから?それとも何か悪さをした?はたまた敵対と見なされる行動をしたか。
(図書館とかで過去の事件を当たってみるか。雷とか炎上とかその辺)
そう逡巡していると、不意に制服の袖を引かれた。
「ん?どうしたのカヅチ」
「ヒナギク、その黄色いのは何だ?」
指さされていたのは玉子焼きだった。そういえば彼が封印される前に玉子焼きなんてものがあったのかすら怪しい。
「はい、あーん」
「!い、いいのか?」
「どーぞ。人用の味付けだから妖の口に合うか分からないけど」
そして恐る恐る口に含むと、カヅチは数回の咀嚼の後ぱぁっと表情を明るくさせた。
「な、なんだこれは!とても美味だぞ!」
「それはどうも」
それから昼食を済ませて午後の授業を受け、放課後に再び資材庫へ。
こんな感じの日が数日続き、その間私たちはカヅチの記憶を元にヒナギクさんの居場所を絞ったり、帰宅前に森へ行って情報収集といった風に過ごした。
土曜日、私は寝る前に主の部屋を訪ねた。
「主。明日って特に用事ないよな…ですよね」
「ええ、まぁ貴方には特に予定は入っていませんが」
「そっか。…明日、隣町にいきたいんだ」
「隣町?なんでまた…」
「あー…ちょっとね」
こればっかりは本当のことを言うわけにいかない。済まない主。