第15章 新しい友人、自覚した想い
的場から指輪を渡されてから数日。
さすがに学校へ指輪をつけていくわけには行かないため、箱とともに大切にしていた。
「行ってきます」
通いなれた道を歩いていると少し先の方に見馴れた後ろ姿を見つける。
「おはよう貴志」
「ああ、おはよう」
「ん?夏目、もしかしてその子か?」
その存在に気づかなかった第3者の声に、は視線をそちらに向けた。
「…だれ?」
当然といえば当然の反応だが、夏目はその反応に苦笑を浮かべた。
「紹介するよ。俺の"事情"を知ってる友人の田沼だ」
「へぇ」
「田沼要だ。よろしくな」
「私は的場。よろしく」
夏目の事情を知ってるってことは、彼もまた"視える"か素質があるか…か。
まぁ、どちらにしろ妖に関わりがあるのなら用心しておくに越したことはないだろう。
貴志には申し訳ないが、こちらとしては危険視せずにいることは出来ない。
「まぁ、妖関係で何かあれば言ってよ。相談くらいなら乗れるからさ」
「…ああ、ありがとう」
それから他愛ない話をしながら学校へ向かった。
「…主。敷地内の見回りに行ってくる」
(紅月?何か怪しい気配でもしたの?)
教室に着くなり、紅月は実体化して―といっても普通の人には見えないが―見回りを申し出てきた。
「いや…、気配というよりも直感でしかないが…」
(いいよ。私は授業あるし抜けられないから頼むよ)
「承知した」
小走りに駆けていく紅月を見送り、窓の方へ視線を移す。そこには快晴の青空がどこまでも広がっていた。