第14章 約束の証
「この指輪…本当に私が受け取ってもいいのか…?」
私には誰かに愛される資格なんてない。
いつの間にか封じてしまっていた幼い頃の記憶。そこで知った両親の想い。周りの妖達がなんといおうと、彼らはずっと味方でいてくれた。私を守ってくれていた。
「どうして幼い頃の記憶を封じてたのかは覚えてないけど、私はずっと両親への恨みだけで生きてきたんだ。でも記憶を思い出して、本当のことを知って、もう両親を恨むことなんてできない」
俯き、そしては続ける。
「目が覚めて…心におっきな穴が空いた感じがした。それで漸く解ったんだ。私の大部分を占めていたのは両親を恨む気持ちで、そしてその恨みがなくなってしまった今…私には空っぽで何も無いって」
「…」
「こんな私は誰かに愛される資格なんてない。恨むことにしか生きる意味を見いだせなかった私には…」
生きる意味を失ってしまった。これからは何のために生きればいい?私はどうしたらいい?…そんな気持ちがあの日からずっと胸につっかえている。
「ならば的場一門の為…いえ、私を生きる意味にすればいい」
「主を?」
「ええ。どうしても生きる理由が欲しいのなら、私のために生きてください」
その言葉に、は何か込み上げてくるものを感じた。それは頬を滑り落ち、膝に置いた手の甲にポタリと落ちる。
そしてゆっくり顔を上げ震える声で呟く。
「私は…生きて…いいのか……?」
優しくを見つめ的場は着物の袖で涙を拭った。
「寧ろ生きてくださらないとこちらが困ります。貴女は私の妻になるのですから」
苦笑混じりの泣き笑いを浮かべる。しかし、その表情はこころなしか嬉しそうでもある。
「…ありがとう主。この指輪、大切にする」
大切そうに胸に抱く右手ではそれぞれの想いをうつしたかのように美しく光を反射していた。