第12章 幼き日の記憶
部屋に侵入してくる複数の大人達。
この光景には、覚えがあった。
『貴様…自分が何をしでかしたか解っているのか!』
『の名に泥を塗りやがって…!』
『禁忌を犯した者がどうなるか…分かっているな?』
――やめろ…
『破門だ!殺せ!!』
――やめろ…
『禁忌を犯した者に粛清を!!』
――やめてくれ…!
それから殴る蹴るの一方的な拷問が始まった。
母は幼い私を必死に庇い、そして父はそんな私と母を必死に庇った。
私はといえば、2人に庇われる中ただ泣きじゃくるだけだった。
そして、遂に2人が虫の息となった頃。
ボロボロで血だらけになった2人が、最後の力を振り絞り私へ術を施した。
『貴女はね…、私と彼に望まれて生まれたの…。でも、それ故に…貴女はとても…とても…大きな力を持って…生まれてしまった…』
『だから…俺たちの形見として…、お前に…ひとつ…術をかけようと…思う…』
『が…この先…、自分を…きら、いに…ならないように…』
『俺たちのこと、は…、恨んで…いい、から…』
2人は手を重ね、の左胸…丁度心臓の辺りに宛てがう。
『『汝、我らが愛せし御霊。その業が幸福に彩られしことを願わん』』
そう唱えると優しい淡い光に包まれ、光がおさまるとはその場に倒れ込み、彼女の両親の姿は消えていた。
『…分かったか?今、お前さんには本当にその術がかけられてる。"莫大な妖力"を負担をかけずに抑え込み、有事の際はその妖力で存在を保つ術が、な』
「そん…な……」
それなら、私は…今まで何を…。
そして紅月は問う。真実を知って尚、両親が憎いか、と。
は首を横に振る。
『まぁ、これを知った上で主が今後どうして行くのかよく考えてみるといい。我は主の味方だ』
紅月がそう告げると、の意識が浮上してゆく。
空虚となった想いを胸に…。