第12章 幼き日の記憶
夢を見た。
主が見つけ出してくれて、言いたいこととは裏腹に拒絶の言葉を言ってしまった。その直後、何かが首と胸にまとわりつき、息ができなくなった。
私を信じているという主の声を最後に、私は意識を手放した。
そして今に至る。
「…これってよくある精神世界とかいうやつか??」
周りは果のない真っ白な空間。私だけがぽつりといるだけ。
とりあえず、少し歩いてみるが歩いているという感覚はほぼ皆無。それでも歩いていくと…
「えーん…えーん…ままぁ…ぱぱぁ…」
幼い子供が泣く声…?
立ち止まりまわりを見ると、子供がひとり蹲っていた。恐らくあの子が泣き声の出処だろう。
そのこへ近づこうとすると、突然白銀の毛並みをした狼が現れた。
「アンタ誰?」
『…なんだ驚かんのか。つまらん小娘だ』
「知らねぇよ。てか質問に答えろよ」
『我はお前から溢れだした妖力から生まれた者だ。名はない』
「ふーん。じゃああんたの名前、紅月ね」
『は?』
「いや、だから名前だよ。名前。いちいちアンタとかめんどいし」
『………好きにしろ』
「おう。ところで紅月、あの子はなんなの?」
どこか嬉しそうにしている紅月に、は問いかける。
『ああ、あれはお前…、いや。幼い頃の主だ』
「そう…」
まだ何も知らない、純粋に両親へ愛情を求めていたころの自分。
そこへ、優しげな微笑みを浮かべた両親が現れる。
小さい私は泣きやみ、両親へ駆け寄る。そんな傍から見ればどこにでもあるような普通の光景。
もし、このまま何も知らずにいられたのなら私は…両親を恨むようなことは無かったのだろうか。
すると、急に景色が変わった。