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的場一門の妖姫

第10章 少女の本心と狼


的場が邸宅へとずぶ濡れになって帰ってきてから、は2日間眠り続けた。
泥を落とし、服も着替えさせ、冷えきっていた身体を温めるために手を尽くしたが、何故か彼女の肌は依然蒼白く冷たいままである。
「…」
何故、彼女の不安定さに気づいてやれなかったのか。後悔しても何も変わらないというのは分かっている。しかし、的場は悔やまずにいられなかった。
確かに、最初は単なる興味と式として使えそうだという理由で一門へ引き入れた。それが時が経つにつれて彼女を見る目が変化していき、いつしかに惹かれていた。
裏表のない純粋な表情、時には悪戯っぽく笑い、また時には好戦的な笑みを見せることもあった。
普段は滅多にみせない弱い部分も自分には見せてくれていた、目の前で眠る少女。
「私は…何をやっていたのでしょうね…。貴女のことを碌に見ようともせずに…」
未だ目を覚ます気配のないの頬に手を添える。
「貴女をこんな目に合わせたくなんてなかった…。こんなに辛い思いをするくらいなら、最初から出会わなければよかったのでしょうね…」
優しく撫で、髪を梳く。
すると、ふと何かの気配がし辺りを見回す的場。
「何者だ」
『ククク…我の気配に気づくとはなかなかに妖力が高いようだな?貴様』
的場の背後に、いつの間にか白銀の毛並みをした狼が佇んでいた。
「ここに何用だ。返答次第では…」
『嗚呼、そう睨むでない。我を退治するなり封ずるなりしてしまえば、そこな娘が目覚めることは無くなるぞ?』
「どういうことですか」
ニヤリと鋭い牙を見せながら、狼は言った。
『我はから漏れだした妖力が形となり、具現化したものだ。つまり、一心同体というやつだ』
「…それで、貴方は何をしに現れたんですか」
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