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的場一門の妖姫

第8章 すれ違う心


気分転換の為にただ宛もなくぼぅっと歩いていた。気づくと見慣れない森深くまで来ていた。
「あれ…いつの間にこんなところまで…」
帰らなきゃ。
そう思うが、ふと気付く。帰り道が分からない。
(マズい…迷った…)
何故ここまで気付かなかったのか不思議なくらいに。
何か場所の手がかりになるようなものがないか辺りを見回すが、鬱蒼と木が茂るだけ。ふと空を見れば、いつの間にやら雲行きが怪しくなっていた。
「出てくる前は晴れてたのに…」
しかし、今は7月。いつ夕立が来てもおかしくはないのだ。
「…とりあえず降ってきたら雨宿りできそうな所見つけるか」
そして再び宛もなく彷徨っていた時。
――――ポツ…
「!」
空は完全に雨雲に覆われ、とうとう雨粒が降り始めてしまった。
「えぇっと…近くに雨宿りできそうな所は…」
瞬く間に雨足は増してゆき、辺りは勿論の服も大粒の雨にうたれて濡れ、重さを増してゆく。
(あーもう!最悪!!)
少し走ると、不意に視界が傾く。
「デジャヴかよ!?」
地盤が緩んでいたらしく、は小さな坂を滑り落ちた。
「いつつ…」
足がズキズキと痛む。どうやらバランスを崩した際に捻ってしまったらしい。
「あーあ…。こんなベタな事が自分に起きるとは…」
滑り落ちたせいで服は泥まみれ、しかも雨を吸って濡れているため身体に纒わり付くので鬱陶しい。
未だ強く雨を降り注ぐ空を見上げ、はゆっくりと目を閉じた。
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