第7章 相談相手
「はぁ…」
本日何度目かも分からないため息。
平日の昼下がり、は的場邸の縁側で柱に凭れながら考え事をしていた。
何故彼女が平日の昼下がりなのに学校ではなく自宅にいるのかと言うと、昨日階段から落ちて気を失ってしまい、的場が1日学校を休むよう命令したからである。
(ただ階段から落ちたぐらいで大袈裟な…)
確かに体は転げ落ちる時に段差で多少打ち付けていたが、頭は幸い無傷。痛みだってないのだ。
「あーあ。暇だァー…何もすることが無い…」
そう言って後方へ倒れると、丁度七瀬が廊下の角を曲がってきた。
「こら。行儀が悪いよ」
「七瀬…」
「的場の婚約者ってことになってるんだから少しは行儀よくしたらどうだい」
呆れ声で言う七瀬を眺めながら、はふと思案する。時折感じる胸の痛みや、的場がをどう思っているのか、それらを相談してみてはどうだろう、と。
「…なぁ七瀬。ちょっと相談事…なんだけど…」
が弱々しくなっているのが珍しく、七瀬はの隣に座って先を促した。
「あの、さ…。主が私との約束を守る為とはいえ婚約者にしたのが何でなのか未だにわからなくて…」
は慎重に言葉を選ぶ。
「家族のような繋がり?がいるのなら、養子でもよかったんじゃないかって…。でもその考えに行くと、こう…胸が痛くなるんだ。これがどうしてなのか分からないけど…」
そこまで言って七瀬を見遣ると、彼女はため息を一つ吐き、視線を正面へ向けて口を開いた。
「なんだそんな事かい。…的場がお前を婚約者にすると言ったのは、なにもその約束とやらを守るためだけじゃない」
「え…」
思いがけない七瀬の返答に、は小さく驚きの声をあげる。