第5章 微かな変化
「…そう。貴方、"視える"のね」
一瞬疑問の表情を浮かべ、そしてぎょっとしたような顔をする夏目。
妖から人間に戻り、敵意は無いことを伝える。それでも半信半疑のようだったが、とりあえず昼休みに昼食を共にする約束をした。
そして昼休み。私達は屋上で並んで座り、昼食を食べながらお互いのことを話す。
「私は母が狐の妖で父が陰陽師の家系だったの。当然父の家族は猛反対したらしいけど、2人は駆け落ちして私が産まれた。――人と妖の半端者、半妖として」
自分の存在がどういうものなのかを知ってからは両親を憎み、存在が半端な自分を恨んだ。早くに両親とも亡くし、孤独の中居場所をくれたのが的場静司。
「的場さんにとってその人は大切な人なんだな」
「…ん。きっと、替えのきかない唯一の人だと思う」
そう。あの人は今の私にとって本当に大切な存在なのだ。
「まぁ、視える者同士なにかあればお互い助け合いましょう?」
「…ああ。よろしく、的場さん」
「その的場さんてやめない?でいいよ」
「じゃあ…俺のことも貴志って呼んでくれ」
「うん。こちらこそよろしく」
微かな変化はやがて大きくなり周りへ影響を及ぼしてゆく。まるで波紋が広がってゆくように…。
この出会いは偶然か必然か、果たして――――…