第3章 祓い屋の会合
「ど、どうしたんだよ?挨拶回りは…」
「何を聞いたんですか」
「別に何も…」
「そうですか。ならばその震えの理由をお聞きしましょうか」
「…え?」
指摘され、初めて気づく。
「…失礼します」
そう前置きして的場がの狐面の結紐を解き、顔を顕にする。
「…なんという顔をしているんですか」
狐面から現れたの表情は、自分でも気づいていないのか明らかに不安に揺れている表情をしていた。
俯くを抱きしめ、再度問う。
「お、おい主!?」
「…何か聞こえたのでしょう?」
「だ、だから何も――」
「大丈夫。今、この部屋には私と貴女の2人だけです。的場の者も、他の祓い屋もその式もいません」
「……」
腕の中から抜け出そうともがいていたは抵抗を止め、ぽつりぽつりと話し出した。
「…捨てられるって…聞こえたんだ」
「捨てられる?」
「ああ。的場は使えないと判断すると切り捨てるって…。それで、ふと思ったんだ。もし…」
その先は言えなかった。先ほどほんの少し想像してしまったもしもの事。
捨てられてしまったら、居場所を失うことになったら、私はどこへ行けばいい?
今の居場所だって的場に与えられたものだ。自分で居場所をつくろうにもやり方がわからない。私の存在意義とは…何なのだろうか。
「人と妖の間に半妖で生まれて、半端者と忌み嫌われて、両親は早いうちに死んで黒い感情をどこに向けたらいいかもわからず、居場所も何も無かった。私には、最初から何も無かったんだ」
与えられたものとはいえ、漸く手に入れた居場所。最初こそ誰も信じられなくて警戒ばかりして気が休まる日なんてなかった。でも今では的場は信じられるとどこかで感じて、居心地の良ささえ感じていたのに。
「私は…どうしたらいいんだ…?捨てられたくない…もうあの頃には戻りたくない…」
普段の彼女は強気で弱音なんて吐かない。だが、今はどうだろう。
居場所を失うかもしれないというだけでこんなにも不安に揺れ、涙する脆い所のある彼女。もしかしたら、今まで何度もそういう"不安"を呑み込んでいたのかもしれない。