第5章 キミだけは手放せないな【ケント】
ダメだ、理性とはこのような時には全く役に立たないようなものだ。
抱きしめたい。
手を伸ばしを抱き寄せた。
小さく「あっ」と驚いた声を出した。
強引すぎただろうか。
私らしくない、しかしどうしてもキミを抱きしめたかった。
の両手が背中に回ってくる。
なんて小さな手だろう。
その手から、じんわりと暖かさが伝わってくる。
「ケントさん、少し強引ですね」
「すまない。どうしてもキミに触れたかった」
「ふふ、優しいケントさんが好きですけど、たまにはこんなケントさんもいいですね。ドキッとしました」
そうか、嫌ではないのか……むしろ喜んでくれている。
なるほど、普段は見せない姿を見せることも、決して悪いことではないのだな。
がモゾモゾと動き、私の首筋に柔らかいものがあたり小さく音が鳴る。
「なっ……!」
「ふふ、私もたまにはこういうことしてみようかと思って」
酷く心臓が高鳴る。なんだこれは。
まったく、キミという人は……。
「んっ……ケントさん」
「お返しだ」
「……口がいいです」
「……フッ、キミには適わないな」
そっと体を離す。が目を瞑った。
まだぎこちなくはあるが、私はゆっくりとした動作で近づき……。
軽く触れるキスをした。
それは、身体が熱くなって、息苦しくもなるようなものだ。
だが、この上ない幸せを感じる。
「ケントさん、大好きです……」
「私もだ……」
角度を変え、何度も幸せを感じ合った。
私はもう、キミだけは手放せないな。
~END~